私は大悪党
大学時代
私は学生寮に入っていて
そこに☆さんという先輩がいた。
☆さんは成績優秀で性格も明るく
後輩たちからの人気も高い。
おまけに容姿も綺麗で、男子からの評判も高い
まさに
非の打ち所がない、完璧に近い方だった。
しかし
☆さんの素晴らしさは表向きだけだった…。
ここまで読んだら
まるで地味な私が☆さんに嫉妬して
☆さんの悪い話をでっちあげて書いているようにしか思えないだろう。
しかし
☆さんにもう一つの顔があるという話は本当である。
ちなみに☆さんのこんな一面を知っているのは
当時の寮生の中では私だけであった。
なぜなら私は
☆さんに嫌われていたからだ…。
きっかけは
☆さんの手帳が紛失してしまったことである。
そのとき私は
☆さんの一番近くという
最も犯行が可能な位置だったので、
☆さんは、迷わず私が手帳を盗んだと疑ったのだ。
もちろん
私は彼女の手帳を盗んでなんかいない。
ただ、
そのときは私もあらぬ疑いをかけられ
気が立ってしまい、ついつい☆さんに反抗的な態度をとってしまった。
今思うと
これが全ての元凶ではないかと思う。
それからの☆さんは
私のことを、なんとか悪人に仕立てあげられないかと
優秀な頭をフル回転させるようになった。
実際
どんなことをされたかというと
☆さんは、寮生が集う会議などに
私がみんなよりけっこう遅れて集合した翌日
「ごきちゃんは昨日の会議で一番最初に集合した偉い子」
という、嫌味たっぷりな作り話をみんなにしたり、
彼女とどこかで鉢合わせしたときに
彼氏との輝かしい恋愛話を私に聞かせるように大声で話してきて、
「私は地味なあんたと違って、彼氏もいる『勝ち組人生』を歩んでいるのよ!」
と猛アピールしてきたりした。
どれも直接悪口を言うのではなく、
遠回しに私を惨めな気持ちにさせるという攻撃だったので
私はされる度に心に傷が残り、辛くなるばかりだった。
これらの☆さんとの出来事を通して考えれば、
きっと☆さんは私に
「私はリア充で性格も良い高価な女!
対してあんたは暗くて地味な無価値な女!」
「だから私の手帳はあんたにはもったいない代物なの!
それが分かったならさっさと手帳を返しなさい!」
…とでも伝えたかったんだと思う。
だから
私が指をくわえて悔しそうな様を見せながら手帳を返せば、
☆さんは大満足だったのかもしれない。
でも私は☆さんの手帳を持っていない…。
たった一冊の手帳で始まった悲しい出来事…。
私はあのとき
「はい、私が手帳を盗んだ強欲な大悪党です。」
と言って、持ってるハズもない手帳を返せば良かったのだろうか。
そもそも
手元にない手帳を持ち主に返すことは可能なのだろうか…?
もしあのとき
☆さんの手帳を盗んだ本当の犯人さんがこの記事を読んでいたら
私はこう訴えたい。
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ねぇ、
どうしてあのときあなたは☆さんの手帳を盗んだりしたの?
もし
魔がさしたとかだったら
もう二度とそんなことやめてほしい…。
だって
たった一つの犯行でも
あなたの知らないところで壊れるものもあるから…。
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by ごき