許された時間

私が通っていた中学校では
毎年秋になると
｢合唱コンクール｣というものが開催されていた。

｢合唱コンクール｣とは
クラスごとにそれぞれ決めた曲を合唱し
それを他のクラスと競い合う学校の行事だ。

毎年
この行事が近づいてくると
クラスのみんなは
｢絶対最優秀賞とるぞー！｣
と意気込んでいた。

そのためか
普段は私のことをいじめているクラスのみんなは
合唱練習の時間だけ
私へのいじめをストップしてくれていた。

それだけではなく
少しミスをしても
いつもなら罵倒されそうな場面で
アドバイスをしたり励ましてくれたりと
私が唯一｢人間｣として扱ってもらえた時間でもあった。

だから私にとって
合唱練習の僅かな時間だけが唯一安心できたのだ。

｢このままこの時間が続けばいいのに…。｣

何度そう思っただろうか。

それもそのハズ

合唱練習の時間が終わったら
みんな｢いつも通り｣に戻ってしまうのだから…。

私にとっては
許された時間が非日常で
許されない時間が日常だった

合唱コンクールなどの競争がなくても
許される時間が続くようにするためには
私たちにはなにができるのだろうか

by ごき